【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第8章 ※歪み
マスカラ…落ちていたんだ。
擦ったらマシになったのに…
梅くんにバレていた。
そっと目の下から手が離れると、意を決して口を開いた。
『…条君と…シてた…』
「………」
私を見つめる梅くんの表情は、何も変わらない。
呆れたよね…
『前もした事…あるの。』
言ってしまえば楽になると思った。
どうせ嫌われただろうと諦め、全てを打ち明けようと思った。
『条君のこと…』「待った。」
梅くんに遮られ、言葉に詰まる。
「そこまで聞いてない…」
梅君が目を逸らす。
『私…ズルいから…
条君がどこかに行ったら嫌だって思ったの。』
涙が滲んで、途端に梅君が見えなくなる。
「せっかく仲良くなれたのに…
友達ができたかも、って思ったのに…
いなくなっちゃうのは…寂しくて…」
溢れる涙を拭う。
拭っても拭ってもポロポロと流れる涙は止まらなかった。
「…十亀がそう言ったのか?お前から離れるって。…何で?」
『………』
始めはよくわからなかった。
けど最中によくわかった。
私を好きだと思ってくれているから。
その思いをぶつけたら、私が困ると思ったから。
それを梅君に言うのは違うと思った。
勝手に言ってしまうのは…
『………』
「言えないんだな…?」
コクンと頷いた。
「お前は十亀の事、どう思ってるんだ?」
条君の事…
『大事だよ。離れていってほしくない…』
本音だった。
「そうか。じゃあ……」
その瞬間
目の前が暗くなった。
大きな手が、後頭部をふわりと包んだのがわかった。
「俺のことはどう思ってる?」
梅君の学ランから柔軟剤の良い匂いが、ほんのりと香った。
『梅……君…?』
「俺がお前から離れるって言ったら…お前はどう思う?悲しいか?寂しいか?」
回らない頭で必死に考え、目を瞑る。
『悲……しい…』
悲しいに決まってる。
考えるまでもなかった。
「沙良…」
体が離され、ドキリとする。
「俺が一緒にいてやる。俺はお前を利用したりしない。
だから…」
垂れ目の目元が真剣になる。
「自分を大切にしてほしい。」
あぁ、そうか。
このセリフは…仲間として…?
『…ありがとう。』