第4章 6つのお題から自由に選択
『お客様には列車を降りていただきます。現在準備を進めておりますので、今しばらくお待ちください』
30分くらい経っただろうか。
先頭車両に職員が集まっていくのが見えた。
状況が状況だけに、誰も不満や苦情を言わず、職員の指示に従い、運転席から下ろされたハシゴで線路へ降りる。
近くの踏切まで線路を歩く。
コンクリートの枕木の上を歩くが、いくつかに金具が取り付けられ、気をつけないとつまづきそうだった。
一番近い踏切は遮断機が下りた状態でその隙間から道路に出た。
踏切の反対側には消防車が止まっている。
その後、タクシーを捕まえてなんとか家まで帰れたが、気分は沈んだままだった。
翌日、出勤で改札を通ろうとしたら警報が鳴り、「係員をお呼びください」と表示された。
ああそうだ、昨日は改札を出ていないんだった。
ふと暗い心持ちが甦ってしまった。
更に翌朝、今日も今日とて仕事である。
何も起こりませんようにとなんとなく祈りながら駅に向かっていたのだが、そんな願いも虚しく駅の入り口に不審者を見つけてしまった。
駅の利用者の顔を覚えている訳でもないのになぜ不審者だと思ったかというと、一般人とはかけ離れた格好だったからだ。
黒ずくめの服に白髪、ものすごく背が高くて極めつけは黒い目隠し。
人を見かけで判断してはいけませんというが、いくらなんでも限度ってものがある。
無理無理、あんな人とは関わりたくない。
あんな目隠しをしていたら周りが見えないだろうと思ったが、なぜかこちらを見ているような気もして、さっさと前を通り過ぎようと足早になる。
が、しかし、
「君、結構変なモノをくっ憑けてるよね?」
「……え」
反射的に声のした方を振り向いてしまうと、例の不審者がこちらを見下ろしていた。