第4章 6つのお題から自由に選択
「好奇心かな。生まれ変わった君が、俺に対してどんな反応を示すのか見てみたかった」
驚くほど率直な返答に、彼女は目を見開く。
「――この夜祭の間だけは、死者と生者の世界が混じり合う。古くからそう言い伝えられてきた。
賑やかな笛や太鼓は亡き人々を慰め、仮装で妖怪に扮するのは鬼や悪霊から身を守るためだ」
童磨の声は淡々と夜祭の意味を語る。
その表情は、祭りの喧騒をよそにひどく静かで、どこか遠くを見つめていた。
まるで別の次元を覗いているような冷たさと、掴みきれない空白があった。
太鼓が遠くで鳴り響き、風にのって笛の音が流れてくる。
提灯の明かりは現世と常世の境をぼやかし、黄泉へと続く道を照らすかのように揺らめく。
「あーあ、祭の最中に面を外しちゃうなんて……」
彼の声、彼の目。
遠い遠い過去の夜、血の匂いの中で、笑っていた男の幻影が重なる。
「鬼に拐われるって町の人に教えてもらわなかった?」
童磨は笑った。
まるで夜空に咲く花火を見上げる子供のように。
この夜を境に、七瀬の姿を見た者はいない。
END.