第4章 6つのお題から自由に選択
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「……七瀬ちゃん?」
童磨の声で、七瀬は記憶の奔流から現実に引き戻された。
頬に涙が流れていることに気がつく。
「私……私は……あの夜……」
彼女は震える唇を真一文字に結ぶ。
すべてを思い出した。
前世で自分は鬼殺隊の剣士で、確かに目の前の男に殺され、喰われたのだ。
「ああ、やっと思い出したんだ?もしかして俺のこと忘れちゃったかなぁって、冷や冷やしたよ」
童磨は相変わらず人好きのする笑顔を見せる。
しかし、その瞳には冷酷無比な光が宿っていた。
「良くも悪くも、君は前世から代わり映えしない。だから、簡単に見つけられたんだけどね」
「……なん、で……」
七瀬は後ずさりした。
恐怖と混乱で頭の中が真っ白になる。
「今も昔も、言葉ひとつで簡単に動揺する。まぁ、そんな純粋さも可愛いけど」
童磨は彼女を見下ろしながら、興味深そうな表情をする。
庭に咲く一輪の花を見遣り、ひらひらと舞う蝶を手のひらで掬うように愛でる、そんな一瞬の慈しみが浮かんで消えた。
「なぜ……私の前に現れたの?」
狼狽する七瀬の声は掠れていた。
喉がカラカラに乾いて唾さえ飲み込めない。
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