第4章 6つのお題から自由に選択
今回は線路内に人が侵入していたらしい。
鋭い警笛とともに急ブレーキがかかり、直後に何かがぶつかり、ベキベキと木の枝を踏み折ったような音がして、電車が止まった。
今は……ちょうど受験シーズンか。
おそらく自分とは全く無関係だろうけど、暗く澱んだ心持ちがした。
『お客様の中に鉄道職員の方はおられますでしょうか?』
再度、車内アナウンスが流れた。
ここはローカル線、しかも外は暗い。
事故の状況を確認するにも人手が足りないことを窺わせる。
『先程の急ブレーキでお怪我をされたお客様、ご気分のすぐれないお客様がみえましたら、車掌までご連絡ください』
『ただいま、警察・消防・関係各所に連絡し、事故対応を行っております。お客様においては今しばらく車内でお待ちください。お急ぎのところ、大変申し訳ございません』
『繰り返しのご案内になりますが、現在、この列車において、人身事故が発生した影響により、運転を見合わせております。お急ぎのところ……』
そんな車内アナウンスを聞きながら、外をみると、緊急車両の赤いサイレンが何台か見えた。
鉄道職員と警察官が電車の下を確認している。
車内は外を確認しようとする人や運転見合わせで帰りが遅くなることを連絡する人、中には顔を俯ける人もいた。
「先程の急ブレーキでお怪我をされたお客様、気分のすぐれないお客様はいらっしゃいますか?」
その中を運転手が声をかけながら通っていった。