第24章 Genesis3:9
「…早く入って」
母親の事務局長室は、シンプルだが高級感が漂う造り。
病院はオンボロなのにここは金をかけているのがわかる。
もしかすると院長室よりも…
ソファに座ると、向かいに母親が座った。
あらかじめ用意していたのか秘書が入ってきて俺の前にお茶を置いていった。
「…翔?身体はもう、大丈夫なの?」
重い頭を上げると、母親が怪訝そうに俺を見ていた。
「半年間、一度しか顔を見に来なかった人がよくそんなこと言えますね」
違う。
こんな事が言いたいんじゃない。
少しでも國村さんとの関係を聴きたかったのに、こんな態度じゃ聴けなくなってしまう。
「だからなに?お手伝いさんにお金を渡しておいたし、通う日数も増やした。松本くんにも謝礼を用意してるのよ?」
きっぱりと言い切ると、母親は湯呑を手に取った。
少し飲むと、俺を冷ややかに見た。
「あなたが診察も入院も拒否したんじゃない。これ以上何を望むの?」
だめだ。話にならない。
「…何の話なんです」
「え?」
「今日俺にするはずだった話を聞かせてください」
一秒でも早く、この部屋から出たかった。
「相続の件よ」
なるほど…これは潤の前ではしづらい話だ。
死にかけた息子に…回復途上の息子にするような話でもないがな。