第24章 Genesis3:9
母親の顔を見ると、呆然と俺を見ていた。
「他に用件がなければ失礼します」
立ち上がってドアを開けると廊下に出た。
母親はもう俺に言葉をかけてはこなかった。
動悸が激しい。
すぐに群馬に行かなければならないかもしれない。
篠原の祖母の様子を見に行かなければ。
ああ…國村のことを聞くのを忘れてしまった。
だがここで國村の名前を出したら、父親がやっている調査に支障が出てしまうかもしれない。
院長室へ向かいながら、頭の中が猛スピードで動いていた。
だが肝心のことを考えようとすると、脳が拒否をしてしまうようで。
考えているようで、考えられていなかった。
ロビーに一旦出ると、患者に紛れて院長室に向かうエレベーターへ向かった。
そこへ駆け足で来るスーツの男とぶつかりそうになった。
「わっ…」
見覚えのある顔だと、一瞬思った。
「失礼」
低く、蠱惑的な声。
ぶつかりそうになって、なんとか身体を翻したが顔から目が離せなかった。
「なんと…もしかして櫻井院長の息子さん?」
「え…はい…」
「とてもよく似ている」
「父を…ご存知なんですか?」
喋りながらも、目が…男の顔から離せなかった。
その男は──
「お母さんとは大学が同窓なんですよ。昔からよく知っています。私は國村と申します」
あんなに探していた、國村隼──
その人だった。
俺は、自分がどこにいるのか
わからなくなった
【Genesis3:9 END】