第24章 Genesis3:9
差し出されたA4の紙。
”相続放棄”の文字が見えた。
「…相続を放棄しろと?」
「そうね、その上でその放棄分は私が相続するようにしてほしいと母には頼むから。だから放棄して欲しいの」
あなたには必要ないでしょ?と言わんばかりの傲慢さにめまいがした。
「それはお祖母様は認めないと思いますよ」
「え?」
あなたがずっと櫻井の家を裏切っていたのを、篠原のお祖母様は知っていたんじゃないか?
「櫻井の相続は放棄しますが、篠原は放棄しません」
「翔!」
「充分じゃありませんか?病院の分だけでも相当の規模でしょう?」
「それは…」
もう破綻寸前の病院のことを持ち出したら、案の定答えに詰まった。
「どうして俺が篠原の財産を相続してはいけないんですか?あなたの血を引いてるんですよ?俺は」
篠原のお祖母様は、ずっと体調を崩して入院していた。
こんなこと言い出すなんて、よっぽど状態は悪いんだろう。
ああ…考えることがいっぱい有りすぎて、混乱する。
國村さんのことも確認しなければならないのに…
頭が酸欠のようにクラクラする。
自分の母親だった人は、人間には見えなかった。
ゆらゆらと実態のない人形のように見える。
「お祖母様の意思を、俺は尊重します」
そう言って、ゆっくりと書類を手に取り、そして破いた。