第24章 Genesis3:9
「ちょ、ちょっと待って…」
俺の返事など必要ないとばかりに、母親は歩いていく。
どんどん、どんどん歩いていく。
どうしよう。
懐に手を入れるとスマホを取り出した。
潤に電話を入れると、すぐに出た。
『翔?どうした?』
「潤…今、母親が自分の部屋に来いって言ってきた」
『院長室で喋るんじゃなかったのか?』
「おまえに聞かせたくないって…」
『なんだよそれ』
「潤、俺まだ混乱して…」
『じゃあ一緒に行くから!』
「いや…とりあえず、一人で話聞いてくる」
『翔!』
「だから、おまえ…その書類しっかりと頼む。時間は少しだけ稼いでおいたから」
『…ああ、わかった』
「話を聞いたら、すぐ戻る」
『……行ってこい。待ってる』
その言葉で、強張っていた身体の緊張が少し取れた。
「…ありがとな。じゃあ、行ってくる」
スマホを切ると、少し早足で母親の後を追った。
大野製作所の行方不明の金の流れを握っているかもしれない人と、自分の母親が結びついてしまった。
しかも大学時代から、もしかしたら切れていない関係かもしれない。
バラバラになりそうな思考を、無理やりまとめながら歩いた。
母親に何を言われてももう驚かない自信があった。
さっきから智の顔がちらついてる。
その顔は悲しそうな顔。