第24章 Genesis3:9
立ち上がると、なんとも言えない表情で俺を見下ろした。
こんな表情初めて見た。
「…なにか?」
「いや……」
その顔をじっと見ていると、随分時が経ったように感じた。
記憶の中の父はもっと精力に溢れていて、頼りがいがあって…
「…身体を、大事にしろ」
俺とよく似たパーツの顔は、酷く表情を歪めた。
「たまには飯を食いに来い」
それだけ言うと、足早に院長室を出ていった。
父親が出ていくと、部屋の中がシンとした。
頭の中でさっきの会話がぐるぐる回っている。
「…翔、俺ちょっと手洗いに行ってくる」
「あ、ああ…すまん。行ってきてくれ」
そう言ったら、潤は俺に親指を立てて見せた。
「さっきの翔、カッコよかったぜ」
「な…何いってんだよ」
「ホントだよ。今まで見た翔の中で、一番カッコよかった」
「ちょっ…もお…なんだよっ急に!」
「いや、今言っておかないとって思ってな。じゃ、行ってくる」
「ああ、漏らすなよ」
「んなわけねーだろっ…」
笑いながら潤は前室に続くドアを開き、出ていった。
伊藤さんに案内を乞う声が微かに聞こえてくるのを背に、父親のデスクまで歩いた。
「……」
小さい頃は、よくここに乗っかって怒られた。
ここから院長室の窓の外を見るのが好きだったからだ。