第24章 Genesis3:9
「お…脅す気か!?」
「そう取っていただいても結構!」
潤が今度は大きな声を出した。
「翔の…自分の息子の長年耐えてきた血を吐くような訴えを聞けないと言うなら……俺は脅迫でもなんでもしますよ」
低い地を這うような声でそれだけ言うと、潤はまたソファの背もたれに凭れてコーヒーを飲み干した。
「翔、良い機会だから全部言ったらいい」
「……潤」
「俺が見届けてやるよ」
そう言ってもらえて、肩に入っていた力がすっと抜けた。
コーヒーカップを手に取ると、ぬるくなった茶色の液体を飲み干して、やっと喉の渇きが取れた。
目線を父親に向けると、座ったまま呆然とこちらを見ていた。
よく見ると、年を取った。
今が働き盛りなんだろうが、昔のような威圧感のあるような迫力はなくなったように見えた。
「…父さん。俺はあなた方に愛されたかった」
そう言うと、少したじろいだ。
滑稽だ。
この人の頭には「肉親の愛」というものが存在しないんだろうか。
「もちろん性的な意味ではないですよ?」
じっと目の奥をみるように正面から見据えると、父親は目を逸らした。
まるでそれは思春期の中学生のような仕草だった。
こんな人だっけ?俺の父親は…
「普通の親の愛が欲しかった。それが子供の成長にどれだけ必要なのか……医療者なのに、そんなこともわからないんですか?」