第24章 Genesis3:9
潤は静かに怒っている。
顔を見なくてもわかった。
俺のために、父親にこんな態度をわざと取ってくれている。
俺は…なんて周囲に恵まれているんだろう。
家族には恵まれなかったが、本当に周囲には恵まれた。
「翔、おまえはこれからどうするつもりだ?またあちらに迷惑をかけるんじゃないか?まだ専門医が取れていなんだろう?整形に席を空けてある。うちに来なさい。専門医もすぐに取らせてやるから…」
「父さん、俺は桜井総合病院には入りません」
「なんだと?」
潤にやられた一撃が余程効いているのか、俺に対しての余裕の仮面まで取れてしまったようだ。嫌悪感むき出しの表情をこちらに向けている。
「もしかして修は医学部には入らないと言っているんですか?」
「そんなことはさせん!」
興奮して顔が赤くなっている。
俺の言葉でこんなにいつもの姿勢を崩している父親を見るのは初めてだった。
「なら、俺がこの病院に入らなくても問題ないじゃないですか…」
修が万が一医学部に行かなかった時のことを考えて、俺をこの病院に縛り付けておきたいんだろう。
以前の俺だったら父親から戻ってこいと言われたら、密かに喜んでいただろうし、そうしなければならないと思い込んでいた。
でも今の俺には、見捨てた実子を、手のひらを返して駒のように意のままに動かそうとする、卑しい男にしか思えなかった。