第24章 Genesis3:9
久しぶりに訪れた桜井総合病院は、鈍い灰色の空にそびえ立っていた。
俺が研修医になる前に来たきりだったが、想像していたよりも建物が古びて禍々しく見えて驚いた。以前はもっと威圧的に、そして穢れがないように見えていた。
「…もうすぐ、大規模改修でもしないとヤバそうだな」
「うん…」
潤は俺の隣で病院を見上げていたが、ぶるっと震えてカシミアのコートの前を閉めた。
「ま、そんなのは翔のお父さんの仕事だよな。寒いから、早く済ませようぜ」
潤は勝手知ったるなんとやらで、松本の祖父母の代からうちの患者だから、病院のことは熟知していた。
正面玄関から入ると、院内をスイスイと歩いていく。
うちにとって松本の家は上得意だから初めて潤が家に来たときは、父も母も俺の部屋まで挨拶に来たものだった。
院長室に上がるエレベーターの前で待っていると、扉が開いた。
そこから出て来たのは、妹の舞だった。
今は育児のため事務局には時短勤務をしているはずだ。
手にコートとバッグを持ってスーツを着ている。
今から退勤するんだろうか。
「兄さん…!」
舞の顔を見るのも久々だった。
たしか秋くらいまでは俺の様子を見に来てくれていたが、しばらく足は遠のいていたから。
「大丈夫なの!?もう元気になったの!?」
飛びつかんばかりの勢いで俺の腕を掴んだ。
「ま、舞…?」
そんなに心配していたとは思っていなくて、驚いた。
「お父さんがっ…行かなくていいっていうから、兄さんの家になかなか行けなくて…!」
「え?」