第24章 Genesis3:9
缶コーヒーを飲み干した俺達は、港区の桜井総合病院に向かった。
暖気のできた車は送風口から温かい風を送ってきて、身体のこわばりが少し取れた。
「…そういえばさあ…」
大通りに出る交差点に差し掛かると、赤信号で車は停まった。
「ん?」
「いい人たちだったな」
「え?」
運転席の潤を見ると、前を見ながら微笑んでいる。
「翔の上司の人たちとかさ…同僚の人たち。みんないい人だったね」
「ああ…うん…」
本当に、こんなに恵まれていていいのか。
くじけてしまった俺のことを、優しく励まして。
そして待っていてくれるなんて…
こんなにありがたいことがあっていいのか。
「井ノ原さんだっけ…副部長の人」
「あ、うん」
「あの人の言う通り、焦らないで体調戻せよ?」
「…うん…」
「今焦ったら、彦摩呂みたいになっちゃうかもしれないだろ?」
「彦摩呂…」
体重100キロ超えなんて、今の俺には想像がつかないが…
でも拒食から過食へ移行する摂食障害の例もあるから、あながち潤の言ってることは間違いではなかった。
「だから、焦るなよ?」
そこで青信号になって、潤はゆっくりとセダンのアクセルを踏んだ。
「そういえば、面倒見てくれてる親戚のじいさんって大丈夫なのかよ?ちゃんと来てくれてんのかよ?」
「大丈夫だよ。世話になってる」
「まあ、じいさんは車は出せないってことだから…三宅先生の診察受けるときは言えよな。迎えに来るから」
「ん…ありがと…」
…ほんと、恵まれすぎてて…
怖いほどだよ。