第24章 Genesis3:9
「そうだよなあ?翔のお母さんって…」
「確か、教育学部だったと思う」
「ふうん…それで政経を議論するサークルねえ…」
「まあいかにも選びそうな感じだけどね」
母は見栄ばかりを気にするところがある。
だからサークルも軽薄なものは選ばなかったんだろう。
「でももう、この頃バブル真っ最中だよね?こんなかたっ苦しいサークルなんて入るかね?」
「まあ、サークルって言ってもいろいろあるし…」
そう言って、缶コーヒーのプルタブを引き上げた。
あまり母について知らないから、答えようがなかった。
「もしかして、彼氏でもいたんじゃないの?」
潤は笑って缶コーヒーのプルタブを引き上げた。
「まあ…居ても不思議じゃないけどね。父とは見合い結婚だし」
母は群馬の旧家の出で、櫻井の家は俺から見て曽祖父の代まで群馬だった。母が大学を卒業した年に、当時すでに桜井総合病院に医師として勤めていた父との見合いを群馬の伝手で祖父母が主導したと聞いている。
「そっか。見合い結婚かあ…」
「ま、よくあることだろ?」
「まあね」
田舎の旧家なんて、今だに江戸時代を抜け出ていないんじゃないかって家もある。
だからこのときの母に自由に結婚するなんて選択肢はなかったんだと思う。