第14章 鋼の錬金術師
「で、あなたは?」
久し振りに会いに来た兄弟に優しい笑みを向けていたイズミさんだが、私を見るなり眉間に皺を寄せた。
心臓がどきりと跳ねる。
さっき、彼女は「軍の狗に成り下がって」とエドワードくんに言っていた。
ということは軍の人間が嫌いだと見える。
どうしよう、本当のことを言うべきか濁すべきか。
ちらりと兄弟を見ると二人とも首を横に振っている。
成程、ごまかしは通用しない―――か。
私は一つ咳ばらいをした。
「申し遅れました。私は・アールシャナです。東方司令部勤務、地位は中尉です。彼らの旅の護衛を任されました」
拒まれるかもしれないと内心怯えながら手を差し出す。
兄弟が「あのが……」「初めて見る光景だね……」とひそひそと話している。
怖がっているわけがないでしょう、失礼な。
「私はイズミ・カーティス。こっちは旦那のシグだよ」
何か思うことがあったのか、イズミさんは一拍間を置いた後私の手を握った。
微塵も顔に出さないようにしているのかもしれないけど、少しだけ眉尻が動いた。
それもそうだろう。
こんなに体温の低い人間がこの世にいるわけがないのだから。
困ったように笑えばイズミさんは一つ息を吐いて「家の中に入りな」と私の背中を思い切り叩いた。
その強さから感じる彼女の思いに、ぐっと唇を噛みしめた。