第13章 あんたたちの代わりに
正直、すごく怖かった。
知識もなにもない状態で赤ちゃんを取り出すなんて。
下手したらサテラさんも赤ちゃんも死んでしまっていたかもしれない。
奇跡、なんて言葉は好きじゃないけど今回ばかりはそう思わざるを得ない。
瞼の裏に蘇るサテラさんの叫び声とたくさんの血の量。
それがイシュヴァール殲滅戦と重なり、無意識に強く拳を握った。
だけど、イシュヴァールと違うのは、今回は誰も死ななかったこと。
この手で、誰も殺さなかったこと。
「………よかった」
震える声が静かな闇の中に消える。
実感が現実となってようやくまともに息をすることができた。
涙が瞳を覆い、視界がぼやける。
泣かないように必死に堪えていた時だった。
「……」
振り返ると、エドワードくんが心配そうな顔で立っていた。
どうやら私がなかなか戻ってこないから、また倒れて寝ているのではないかと思ったらしい。
「すぐ戻ります。ご心配おかけしました」
泣きそうになっていることはどうやらバレていないみたいでほっと胸を撫でおろす。
彼の前ではできるだけ泣きたくない。
泣き顔をこれ以上見られたくない。
そそくさと戻ろうとするとまた彼に名前を呼ばれた。
彼を見るといつになく真剣な表情をしていて、少年というより一人の男性という雰囲気があり、私は視線を外してしまった。
「な、んでしょうか……」
「泣いてるんじゃねえかと思って」
「まさか。なんで泣く必要が……?」
ダメだ。
それ以上は何も言わないで。
我慢していた気持ちが溢れてしまう。
あなたの前で泣きたくないのに。
情けない姿はもう二度と見せたくないのに。