第9章 ローグ 「一輪のジニア」
それから半年、私はギルドでローグさんと顔を合わせても話さなくなった。今日は1人でクエストに出かけた。
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あと一人連れてきたら良かった。…後悔してももう遅いけど。
今私は油断したほんの一瞬の好きに囚われしまったのだ。
近くに敵がいて常に警戒して睨んでいると違う1人の男の人に髪を強く引っ張られた。そして口に強引に何か変な薬を入れられて。
飲んじゃダメだ。
そう思って飲み込まずにいると彼らに無理やり口を開けさせられて水が入ったボトルの口を咥えさせられる。それでも水を水を飲まないと鼻も塞がれる。
息ができなくて私は水と共に薬を飲んでしまった。
「んん…っ!」
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意識が無くなったと思うと私は夢を見ているようだった。料理をしていた少女が男たちに捕まえられてどこかへ連れていかれる。
少女は涙を流しながら叫んでいる。
『ローグ!ローグ、助けて…!!』
…ローグ?なんでローグさん?変な夢だと思いながらもなかなか目が覚めなくて。
少女が連れられた後、少年があの家に入ってきた。
『カナタ?…どこだ?』
そして初めて気づいた。…これはあのカナタさんの記憶なのかもしれない。そしてこれは、ローグさんだ。幾ら探しても見つからなかったのか外も探しているローグさん。
『カナタ?…カナタ!!』
とっくに連れ去られた彼女の名前を呼んでいる。少しして膝から崩れ落ちたローグさんは玄関前に綺麗に飾られていたジニアを花瓶ごと床に投げつけた。
「アイツも、居なくなった…!!」
彼は床に散ったジニアを踏みつけようとして立ち上がったが、寸でのところで脚を止めた。
「違う、俺が守れなかった…」
そこで、目が覚めた。もう何時間も寝ていたようで、起きると小さな出窓の外は暗くなっていた。
周りに敵がいなくて今が逃げるチャンスだと拘束の縄を外そうとした瞬間、扉が開いた。
「カナタ様!」
ユキノさんが駆け込んできて床に膝をつきながら私を抱きしめた。
「ユキノさん…?なんで…」
突然のことに口をあんぐり開けているとその後からドタドタと足音が聞こえてきて、スティングさんが入ってくる。