第9章 ローグ 「一輪のジニア」
言われたところに着いた。少し息を弾ませながら顔をあげると、そこには色とりどりのジニアが咲き誇っていた。特別あの花が好きな私には嬉しすぎる。
「凄いです、こんなところ知らなかった!」
テンションが上がっていつもの私じゃないくらいはしゃいでしまう。そんな様子をローグさんに見つめられて気がついて慌てて。恥ずかしくてピシッと気をつけをしてしまった。
「っ…、な、にしてるんだ」
ふっ、と笑いを堪えながら肩を震わすローグさんを恥ずかしくて顔を真っ赤にしていると。
「なんだその顔。ほんと…」
そう言ってからローグさんはさっきまでとは売って変わって。少し悲しそうな顔になってしまったように見えた
「俺はこれだからこの花が嫌いだ」
そう呟いてからローグさんは草の上に腰を下ろして見上げて聞いてきた。
「俺の昔話を聞いてくれるか?」
私が彼の横に腰を下ろすと、それを返事と受け取った彼がローグさんは語り始めた。ぽつりぽつりと。
「俺はスティングに出会う前、1人で山の中で過ごしていた。ある日、俺はそこに迷い込んだ少女を見つけたんだ。それが前に話していたカナタだ。奴隷だったがどうにか逃げてきたらしくてな」
思い出しているのか、幸せそうに見える。
「それから何年もアイツと過ごした。カナタは俺にいつもベッタリで正直鬱陶しかったし無下にしたときもあった。でも、アイツはずっと俺慕ってくれていた。…優しくしてやるべきだったんだ」
ふと横を見ると、彼は隅々まで思い出すように目をつむって話している。
「でも、ある日アイツは居なくなった」
声のトーンが落ちた。ローグさんはため息をついた。
「俺が薪になる木を探しに行ったあの日、アイツは家にいて料理を作っていたはず。なのに家に帰った時には居なくなってた。家出とかじゃない。料理は作りかけだったからな」
そしてローグさんの手に彼の爪が強くくい込む。
「俺があの日家に居てやれたらカナタは守れてやれたはずなんだ」
私はなんだか痛々しくてローグさんの手に手を重ねて爪痕を無でる。ローグさんはゆっくりと目を開いて私を見た。
「本当に、お前じゃないのか…?」