第9章 ローグ 「一輪のジニア」
それにしてもどこに行こうか。何も考えないでぶらぶら歩いてしまっている。ローグさんも忙しい人なのに申し訳ない。
立ち止まって右を見て、左を見て、前を向く。やはり何も思いつかない。
「どこ行きます?」
思い切って聞いてみると、意外にもローグさんも真面目に考えてくれている。
「…そうだな。カナタは花は好きか?」
「はい、好きです」
つい、勢いよく返事してしまって手で口を塞ぐ。ローグさんも目を見開いた。
…恥ずかしい。そう思って少し俯くとローグさんはフッと笑った。
「好きか。良かった。なら、すぐ近くに花が綺麗に咲いているところがあるからそこへ行こう」
そう言って歩き出した。
ーーー
何分か歩いて分かったけどローグさん脚が長い。もちろん分かってはいたのだが歩くのが早くてこっちも早歩き。小走りで追いつくがまた置いていかれるから走る。それを繰り返していると目の前のローグさんが急に止まった。
「わぶっ、…どうしたんですか?」
背中にぶつかってしまって謝りながら聞くとローグさんはこっちを振り返って
「…歩くスピードが早かったか。今度はゆっくり歩く」
と謝ってくる。驚いて私は首をぶんぶん横に振った。まさか合わせてくれるなんて。
「いやいや、私の脚が短いんで!それにしてもローグさんってほんとスタイルが良いですよね」
ローグさんを見上げて微笑むと彼は少し固まる。そして口元を隠すように手の甲で抑えてから後ろを向いてしまった。
「そ、うか…?そんな事はない」
言葉に詰まって…。え、照れてる。ちょっとからかってみようと思った時、
「カナタもスタイルは良い。それに、お前は顔も良いだろう。オルガやドーベンガルもお前の顔を初めて見た時照れていた」
と言われる。想像もしていなかった暴露に思考が停止して体温が異常なほど上がる。
「え、へへ。ありがとう…ございます……」
消えそうな声でそう言って2人で顔を真っ赤にしてしまう。そして少ししてローグさんがこっちに声をかけた。
「大丈夫か?…じゃあ、行こう」
大丈夫と答えると頷いてから歩き出すローグさん。今度は凄くゆっくり歩いてくれる。嬉しくて微笑むとローグさんもこっちを見てから前を向いて少しだけ笑った。