第8章 スティング 「貴方は貴方」
普通の病院じゃどうにもならなくて、魔導師専用の医者に私を連れて行ってくれた。そこで医者は、
「んー…この症状は…、闇ギルドの奴らが開発してた……?もしかしてこれ体内に入れた?」
あの時見たラクリマの写真を見せられる。あの赤黒いラクリマ。素直に頷くとお医者さんは頭を掻いてから私の頭をわしわし撫でた。
「そうか、俺じゃ治せない。ごめんな。…辛いよな。ほんとにごめんな」
急に謝り出す彼。何なのか分かってない私よりもお医者さんの方が辛そうで私は焦って微笑んだ。
「大丈夫です…!」
そう言う私にお医者さんは眉を下げて首を横に振った。
「このラクリマはね。情報によると人間を悪魔に変えるために冥府の門の奴が作り出したんだ。このラクリマは特定の子供にしか効かないんだ。」
…だから、誘拐されたんだ。私がどこか納得したように小さく頷く。それを見てお医者さんはまた謝った。
「……ごめんよ」
そう言うお医者さんの手を握って私は必死にううん、と首を振った。お医者さんも私の手を握り返して見つめ返してくる。
「このラクリマは豪炎の悪魔を作り出すらしい。……そして、ラクリマに蝕まれ続けた体はゼレフ書の悪魔そのものに変わっていくんだ」
それを聞いて合点がいく。多分、アルが気味が悪いって言っていたのは私だ。怖がらせていたのは、変わってしまった私だったんだ。悲しいけど涙は出なかった。
「俺も協力して治せるように善処するから、一緒に頑張ろう」
そう声をかけて笑いかけてくれたお医者さんに私は無言で深く深く頭を下げた。
ーーー
それから4年後、お医者さんは亡くなった。
私のお母さんもお父さんも亡くなった。
お医者さんは息を引き取る前に一言言った。
「ごめんなぁ…、カナタ。治してやれなかった。一生の不覚だよ」
自嘲気味に笑うお医者さんが私の手を握る。お医者さんの手は見る見るうちに赤く火傷していく。
「あのラクリマ、適応しなかったら死ぬんだよ。でもさぁ、俺、カナタに適応して良かったなとは、言えないんだ」
痛みも感じず、最後まで話をするようにお医者さんは天に昇った。お医者さんと、お父さんとお母さんは死んでしまった。