君 死 に 給 う こ と 勿 か れ 。【鬼滅の刃】
第1章 憐 れ な 少 女 。
目が覚めると、私は木の幹に拘束されていた。
まだ朧気な頭を使い、ここが何処なのかを探る。
すると、私に複数の視線が突き刺さっていることに気がつく。
「お目覚めになられましたか、月喰さん」
深い菫色の瞳を持った、美しい微笑みを浮かべる女性がいた。
といっても私と歳は然程変わらないだろう。
優しい口調とは裏腹に、何処か棘を持った眼差しだ。
心の底に赤黒い、憎しみの色が窺える。
蘇芳色を具現化したような人だ。
……そうだ。あの男の人は何処にいるのだろうか。
てっきり、殺されるものだと思っていたから。
『……、ここ、は…』
「まあまあ、それはさておき。貴女は鬼ですか?それとも人や鬼とは別の生き物ですか?」
面倒なのか、はぐらかされてしまう。
…というか、なんで選択肢に人間がないんだろう…。
…ああ、鬼を食べていたからか。
『…鬼…と言ったら?』
「そうですね……極刑は免れることはないでしょう」
ニコリと笑みを崩すことなくその女の人は極刑と口にした。
まあ私は、鬼ではないから死ぬことはないだろう。