第19章 【宿儺/コミュお題夢】氷霜の契り
「……私は、あなたの暇つぶしの道具ではございません。この里の平穏を贖うために、この毒を研いでいるのです」
「平穏だと? 噴飯物だな。この平安に、そんな軟弱なものは存在せん」
宿儺は僅かに目を細め、彼女の唇を親指でなぞった。
その指先には、先ほどまで誰かを屠っていたのかもしれない、微かな血の匂いが残っていた。
鉄の匂い。そして、焼け焦げた肉の臭いだ。
ゆめは小さく嘆息した。
「つくづく、女心が分からない御人ですね」
どうせ、道すがら息を吸うように、数多の術師を葬ってきたのだろう。
彼にとっては、散歩の途中に生えている雑草を踏みつけるような感覚。
命の価値など、彼の前では無に等しいのだろう。
その夜、庵の周囲には裏梅によって帳が降ろされる。
侵入者を阻むためではない。
宿儺が、ゆめという「玩具」を独占するための静寂を作り出すためであった。
音も、匂いも、気配も、全てが遮断される。外界から切り離された、二人だけの密室。
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