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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第19章 【宿儺/コミュお題夢】氷霜の契り




反転術式をもってしても、ゆめの作り出す複雑な毒を浴びれば、回復に時間を要する。


その特異な術式が、戦いの最中の宿儺の目に留まったのは、ほんの数ヶ月前のこと。



「本日は、何用でしょうか」



ゆめは視線を上げず、静かに口を開く。


一瞬にして、空気が変わった。

圧倒的な存在感。

体内の呪力がざわめく。


冬の冷気さえもが畏縮するかのように身を竦めた。


背後に立つのは、人の皮を被った災いそのもの――両面宿儺であった。



「案ずるな。今日は、藤原の放つ無能どもを切り刻む気力も湧かぬほど退屈でな」



彼の「案ずるな」ほど、安心出来ぬものはない。

その声音は、獣が喉を鳴らすような危険な響き。

四本の腕のうち、二本を胸の前で組み、残りの二本は気だるげに下げている。

四つの目が、同時にゆめの細い首を見つめた。


その視線は、まるで獲物を品定めするかのように、彼女を観察していた。


ゆめの背に、冷たいものが走る。

恐怖ではない。

もっと複雑で、名状しがたい感覚だった。

彼の視線を受けるたび、鼓動が速くなる。


生きていることを痛烈に自覚させられる高鳴り。

奇妙な昂揚だ。



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