第2章 その感情の正体は
〔あなたside〕
幼稚園の頃、大好きだった父が病気で亡くなった。
父がいなくなった後、母が女で一つで育ててくれていたけれど、まるで恋人みたいに仲が良かった両親。
母は父がいなくなった寂しさに耐えきれなかったのか、私が小学三年生の頃に再婚した。
それが、私の男運の悪さを象徴するかのような出来事の始まりだった。
優しくていい人だった新しい父。母の為というのもあったけれど、それとは関係なく、そんないい人だった父に、私もよく懐いていた。
小学六年生になり、少しづつだけれど私の体も女性へと近づいてきていて。
それでも私はまだまだ子供だったから、母が知り合いと会う為出かけていて、遅くなった日にそれは起こった。
当たり前のように懐いていた父と、寂しさで一緒に寝ようと父の布団で父と眠る。
誰が想像出来ただろうか。私だって、最初何をされているのか全く理解出来なかった。
私はまだ何も知らない子供なのに。そんな子供に、父親だと思っていた人が。
「はいい子だろ? 大人しくしてなさい」
口を大きな手で塞がれ、囁かれる。
大好きな新しい父、優しくて温かい父。
なのに、この人は誰だろう。
こんな気持ち悪い男は、知らない。
体に這い回る、大きくてゴツゴツした手が、物凄く不快で、吐き気がする。
泣きながら、母が早く帰って来てくれる事を願って、必死に耐える。
大人の、しかも男の力になんて、子供が適うはずがない。
「おと……さっ……嫌だっ……やめっ……」
口が自由になり、私は絞り出すように泣きながら懇願する。
私の願いが通じたのか、部屋の扉が開かれた。
「な……に……してる、の?」
母の目が見開かれ、持っていたカバンが落ちる音がやたらと大きく響いた。
あろう事か、父は私が誘ったんだと言った。
そんな訳あるわけないのに。私はまだ何も知らないただのガキなのに。
助けを乞うように、私は母を見た。
そこには、また信じられないような光景があった。
母が、私を睨みつけている。
まるで、敵を見るような目で。母の憎しみが露になった視線が私の心に突き刺さる。
「父親に色目を使うなんて……気持ち悪い子っ!」
「ぉ、か……さっ……」