第4章 傷とキズを舐め合うように
デート当日、初めての私服姿に身悶え、いつもと違うナチュラルメイクの可愛さに卒倒しそうになり、手を繋ぎながらって言った事を覚えててくれたのか、ちゃんから「繋がないんですか?」と見上げられた時には、押し倒しそうになった。
好きな子とするデートは幸せしかなくて、終始ニヤニヤしていたら、ちゃんに気持ち悪いと言われてしまった。
彼女と歩く街並みは新鮮で、何をするにも楽しくて、この時間がずっと続けばいいと思った。
そんな俺の願いも虚しく、当たり前に時間は過ぎて行く。
夕飯を食べ終え、店から出ると、もうすっかり暗くなっていた。
「あの、いいんでしょうか……本当にご馳走様になってばかりなんですけど……」
「いいんだよ。俺がやりたくてやってるだけだし、こんな時くらいは、格好つけさせて」
困った顔をしていたちゃんも、俺の言葉に「ご馳走様でした」と頭を下げた。
「はぁー……もう終わりかぁー……寂しいなぁー」
空を見上げながら、感傷に浸っていると服の裾を引かれる。
「後……少しくらいなら、大丈夫ですよ?」
上目遣いで見上げられ、俺は心臓が口から出るかと思った。
まぁ、背丈的に圧倒的な差があるから見上げると、自然と上目遣いになっちゃうんだろうけど。目に毒だ。
「じ、じゃぁ、さ、俺ん家来る?」
目を開いて固まってしまった。
しまった。言い方を間違えた。
「いや、そうじゃなくて、勘違いしないでねっ! ほら、今日はちゃんどぽも休日出勤だけど昼には戻って来てるし、三人でちょっとだけ酒でもっ! 一応うちにもいい酒あるしっ!」
早口で言った後、これはこれで必死過ぎて逆に怪しいような気がしたけど、ちゃんが笑ってくれたから、救われた。
そして二人でまた手を繋ぎながら、軽く買い物をして帰宅する。
「たっだいまーっ! ちゃんどぽー?」
靴を脱いで部屋に入ると、部屋の方から微かに疲れた声で返事が帰って来る。
「寝てたのかよ。ちゃんどぽ起こしてくるよ」
「じゃぁ、私買ってきた物で何か……」
「いやいや、俺やるからちゃんはソファーにでも座ってて」
「そんなわけにはっ!」
なかなか引き下がらないちゃんに、俺は名案を思いつく。