第1章 プロローグ
「もしかして、飲んでるの”スターダストレビュー”ですか?」
「そうです。」
「このお客、強いのが良いって言ったからねぇ」
多分、この人結構声かけてくるタイプの人かも。
彼がミュージシャンなのはわかったが、私は素性を明かしておらず、こんなよくわからない初対面の女によくも話しかけられるな、と思いながら緊張のあまりに飲む一口を誤ってむせた。
ゲホゲホと咳している私に「大丈夫ですか」と焦りながら背中を摩ってくれた。
優しい?のか?
「そんな緊張しなさんな。この方も一応ここの常連だよ。」
マスターに緊張を見抜かれて更に動きが鈍くなる。
「こんな僕ごときに緊張しなくても。」
「初対面って誰でも緊張するものでしょうよ。相手なんて関係ありませんよ」とかよくわからない返しをしてしまった。
少しの沈黙。
口を開いたのはマスター。
「みずき、緊張してると悪酔いするから、少し胃に何かいれて薄めな。メニューはこれね。
それからyasuさん、アンタは何飲むんだい?」