第80章 家族の形$ 其の二
「帰って休むか?」
差し伸ばされた手に自身の手を重ねる。
刀を握り続けて、鍛錬に明け暮れたしのぶの手は一般的な女性よりも硬さを帯びているのだが、鋼鐵塚の手はそれよりも硬く、皮膚も厚く感じる。
鍛治に携わる、職人の手だ。
「蛍さんにお願いしたいことがあるのですが…」
「何だ?」
しのぶのお願いというのが手術用の器具の注文だったので、鋼鐵塚は仮面の内側で、苦虫を噛み潰したような顔になった。
そりゃあ、直ぐに艶っぽい話にならないことくらいは分かっていたつもりだったのだが……
「………」
鋼鐵塚は自身の手を見て思案する。
炭治郎が見つけた刀を研磨する少し前辺りから身体も鍛え始めた鋼鐵塚は以前より筋肉がついたことに少しだけ安堵していた。
火男面を外して街に出ると鋼鐵塚を女と勘違いして口説いてくるような妙な輩も居たからだ。
あれ以来、仮面を外す機会がほとんど無くなった。