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短編ごった煮

第5章 幸せでいてくれるのなら、後悔、など/イグニス(ウィルオ)



「……どうした?」

彼の心配そうな呼びかけに、私ははっと意識を現へと戻した。思った通り心配の色がにじみ出た瞳が伺え、私はつい苦笑を漏らしてしまう。

「どうもしてないわ、イグニス」
「ならば、何故泣く」

私の返答に納得がいかないように彼が呟く。確かに、彼の言う通り私の頬に涙が伝った後のようなものがあった。どうやら、泣いてしまっていたらしい。
私はそれをそっと拭うと心配しなくていい という意味を込めて彼に笑いかけた。

「……少し、思い出していたの。あの日のことを」

彼は私の笑顔に安心したように少し表情を緩めけれどすぐにまた厳しいものへと変えていった。ああ、心配性の彼のことだ。また、何かひっかかったのだろうか。

「あの時、」
「うん」
「お前は解放を執行したな」
「ええ」
「あの時のお前はとても綺麗だった。決意をし、自信にあふれたお前の姿を今も覚えている」
「……ありがとう」
「ななし、お前は」

彼は一段と眉間に皺を寄せ、言いにくそうにいったんそこで言葉を区切った。瞳は心配と悲しみの色をのぞかせている。
なに、とそう私が促せば彼は静かに言葉の続きをつむいだ。
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