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短編ごった煮

第5章 幸せでいてくれるのなら、後悔、など/イグニス(ウィルオ)


そして、彼の番。

さようならと、大好きな友達に向けたそれと同じ笑顔で告げようと思ったその時に、彼はあまりにも酷な言葉をその口から漏らした。「消滅する」、と。
頭を鈍器か何かで殴られたような、そんな衝撃だった。

消えてしまう?
どうして?
何故消えなければいけないの?
幸せになって欲しいのに
苦しんだ分、幸せにならなくちゃいけないのに
彼にはその権利があるはずなのに

私は思わず彼を抱き締めていた。
消えてなどしまわぬように、この手で、腕で、私という存在で、彼をつなぎ止めようと必死だった。
力なんかいらない。命なんかいらない。欲しいのはただ、彼の幸せ。彼の自由。
ただ、それだけだった。

……私の願いを、奇跡を叶えてくれたのはいったい誰?
シャムロック?……それとも。
私の大事な大好きな友達だったのだろうか。
最初は、その暖かな光が信じられなかった。いや、本当に信じていいものなのかと疑った。
だって、まさか、そんな奇跡みたいなこと。
けれど、確かに奇跡はおきてくれた。

私とは違う「もの」とそう主張していたとても冷たい頬に、指に、身体に、私と同じ温度が。
静寂だった彼の胸に、心地の良いとくんとくんという音が。
そして、私を抱き締め返す彼の力強い腕が奇跡はおこったのだと、そう証明してくれた。

彼はもう違う「もの」じゃない。私と同じ、人間。
私の、愛しい人。
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