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短編ごった煮

第5章 幸せでいてくれるのなら、後悔、など/イグニス(ウィルオ)


解放を決めたあの時、確かに私には誰にも揺るがされることない決意と不思議とわき出る安堵、そして一抹の寂しさをその胸に抱えていた。
彼らと一緒にいたくなかったのかと問われれば間違いなく「いたかった」と答えるだろう。短い期間といえようとも、彼らは確かに私の友達だったと思うから。
特にエミリーは、みんなの力を借りてまで精霊人形とした、ずっと側にいて欲しいと思った大切な大切な友達。
出来ることならば離れたくなどなかった。きっと、エミリーも私と同じ気持ちでいてくれていただろう。
ごめんね、とたまに呟く言葉に返ってくる返事は何もないのだけど。

……私の一存で決まった解放に彼らが、エミリーが、酷く困惑していたのを覚えている。「何故」と問いかけられた言葉には、何も答えられなかった。
大切な、大切な、私の人形達。
大好きなエミリーがいてくれる生活をもっともっと楽しく、鮮やかに変えていってくれたかけがえのない存在。
大切だった。大好きだった。
けれど……。
私はそれさえ捨ててしまえるほど、自分の命すら惜しくないと思えるほどの、大切で愛しい人が出来てしまった。

その人の名はイグニス。執行者といわれるあまりにも重い枷を、シャムロックの意志を引き継ぐ人形。

使命という鎖に囚われ孤独の道歩んできた彼を、私はなんとしてでも救いたかった。友達と自分の命を犠牲にしてでも彼に幸せになって欲しかった。自由になって、欲しかった。
何故惹かれたのかはよく分からない。
敵対し私の命を奪うかもしれないとても危険で怖い人だったと、そんな事ばかりが思い出される。
怖い人。けれど、そう、たまに酷く悲しい瞳をする人だと少しずつその存在が気になっていったのかもしれない。侵蝕していくように、じわじわと。

そんな彼を助けたいと解放を決意し、正にその瞬間が訪れた時。
私は切り付けるような悲しみと、寂しさと、そしてやっと彼が自由になるのだという喜びに満ちあふれていた。
ウィルやジル、ルディ、ジャック、エミリー、彼らの最後の言葉は、やりきれない思いや何故という疑問でいっぱいだった。一様に、悲しげに顔を歪めて。
胸が痛んだけれど、仕方ないのだと自分を言い聞かせるように努めた。勝手に決めた別れなのだから、せめて私だけでも笑顔でいなければと。そんな自己満足でしかない笑顔を作った。
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