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短編ごった煮

第4章 願わくばその瞳と永訣ならんことを/レフィ(ルミナス3)


「まだ、私が見えますか」
「ああ、左目だけだけど」
「味覚がないって本当ですか」
「エルルの料理の味が分からなくなるくらいにはな」
「他には、何が消えてしまうんですか」
「俺そのもの。他の五感も、嬉しいとか悲しいとかそんな感情も」
「感情、も」
「そうだ。そして、俺はラピスになる。アウラ・ルーの星の瞳に」
「嘘だ」
「嘘じゃない」
「嘘だっ!」
「嘘じゃ、ないんだ……。俺は、人間なんかじゃない」

矢継ぎ早に繰り出される私の言葉に、しっかりと返してくれる。自分だって辛いくせに優しい笑みをして私を撫でてくれて、悲しすぎる言葉を簡単に口にするくせに泣きそうに瞳を揺らす。
そんな彼が、人間じゃない?
なら人間とは何だと言うのか。人間とはどういうものなのか。こんなにもあたたかくこんなにも優しくこんなにも繊細でこんなにも強い彼が人間じゃないと言うのならば!

「違う!レフィさんは人間だ!紛れもなく、私たちと一緒の!人間なんです……!」

こらえきれず叫ぶように絞りだした言葉はレフィさんにたいしてではなかった。それは紛れもなく、「レフィさんが人間じゃなくなってしまう」と恐れる自分にたいしての叱咤だった。
驚きに目を開くレフィさんは、すぐにまた笑みを浮かべる。そこに自嘲とも自虐とも取れる色が見えて私は胸を締め付けられた。

「そうだな、「まだ」人間だ」

ゆっくりと重たい息を吐き出すみたいに出てきたものに、私はまたぼろぼろと締まりなく涙を流す。

まだ、なんてそんなこと。

「……そんなこと、言わないでくださいレフィさん」

私の懇願に、レフィさんが応えることはない。

心臓が握り潰されそうだ。ぎゅうぎゅうと圧迫され抜け出す余地もない。
馬鹿みたいに我が儘が言えればよかった。
言ったら許さないと勝手に怒って、強制させたら、陽炎の如き安息を手に入れることができたかもしれないのに。
それでもできないのは。

いずれ何も見えなくなるはずのその両の瞳に誰にも揺るがすことのできない光を宿していたから。

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