第4章 願わくばその瞳と永訣ならんことを/レフィ(ルミナス3)
「……がう。違う……!」
とうとう顔を出したそれに、私自身が否定する。まだ決まったわけじゃない勝手な推測であるはずなのに、それはもう覆すことのできない悪夢であるかのように。
「誰だっ!」
「ぁだっ……!」
私の声で漸く存在に気付いたのか。グレン先輩の怪訝しげな声とともに勢いよくドアが開かれた。多少身体を預けるようにうずくまっていた私は保健室へと勢いよくなだれ込む。
「お前は……」
「……ななし、か?」
「……あ、あははは」
倒れたまま顔だけ上げ二人を見れば、驚いたようすのグレン先輩と呆れたように私を見るレフィさんに渇いた笑いしか出てこなかった。
「何をしていた」
厳しい声音をしたグレン先輩がその眉間にしわを作る。たまに見る稽古の時の彼も厳しいのだけどそれとはまた違う、まるで詰問のようなものを感じ私は息をのむ。怖い、と逃げ出したくなった。
けれど今はそんなことをしていられない。
倒れた身体を起こして、そのまま座り込む。
いっそ逃げれなくなればいいんだと半ばやけくそになってグレン先輩の目をしっかり見詰めた。
「レフィさんが、目覚めたと聞いたので」
震える声でそう答えると少しだけグレン先輩の眉間のしわが薄らぐ。しかし無くなることはない。彼は危惧しているのだと思う。きっと、さっきの彼らの会話は誰にも聞かれてはいけないものだったのだろうから。それが、私に聞かれてはいないかと。
「……何も聞いてませんよ」
「……!」
それが嘘だと言うことは明白だった。ただ、私はそんなあからさまな嘘を通して彼らに伝えたかった。
「何も知りませんから、誰に何を言われたって何も答えることはできません」
知ってしまった。けれど口外することはない。
暗にそう、一方的に約束したのだ。