第43章 きっといつか
途中で追い付かれ、殺されるかと思ったがすんでの所で当時の炎柱に救われた。
その後炎柱は、俺と生き残った従姉妹を引き合わせてくれた。
けれど、その再会は伊黒の心を大きく左右するものだった。
──パァン
従姉妹は伊黒の姿をみるなり、思い切り頬を叩きつけた。
そして、従姉妹は伊黒を罵った。
「あんたのせいよ!!あんたが逃げたせいでみんな殺されたのよ!!50人死んだわ。“あんたが殺したのよ”!!生け贄のくせに!!大人しく喰われてりゃ良かったのに!!」
従姉妹の罵詈雑言には、正当性なんて欠片もない。
けれども、嫌と言うほど俺の心を抉った。
逃げれば親族がどうなるか。
考えなかった訳じゃない。
でも、俺は逃げた。
“生きたかった”。
それでも伊黒は自身を責めた。
“屑の一族に生まれた俺もまた屑”
背負う業が深すぎて、普通の人生は歩めなかった。
助けてくれた当時の炎柱に、鬼殺隊へ入隊したいと懇願した。
事情を把握していた炎柱は、彼の気持ちを尊重し鬼殺隊へと迎え入れてくれた。
やり場の無い思いは全て、鬼に向けた。
ひたすら鬼を恨み、憎んだ。
そうして誰かのために命を懸けると…自分が何か、少しだけでも“いいもの”になれた気がした。
だけど、いつまでもいつまでも…恨みがましい目をした50人の腐った手がどこにも行けないよう俺の体を掴んで爪を立ててくる。