第43章 きっといつか
俺は全身から汗が噴き出して、音がやむまでまんじりとも出来なかった。
12になった頃、座敷牢から引き摺り出された。
きらびやかでゴテゴテと豪華な部屋。
御神体のように鎮座していたのは下肢が蛇のような女の鬼だった。
夜中に俺を見に来ていたのはコイツだと、直ぐに解った。
鬼「小さいねぇ、小さいねぇ。やっぱり、もう少しだけ大きくしてからにしようかねぇ。」
俺の一族はこの蛇鬼が人を殺して奪った金品で生計を立てていた。
その代わり、赤ん坊が大好物なこの女に自分達が生んだ赤ん坊を生け贄として捧げていたのだ。
俺は珍しく生まれた男で風変わりな目をしていたためこの女に大層気に入られ、成長して喰える量が増えるまで生かされていたのだった。
俺は更にもう少しだけ生かされることになり、女は俺の口の形を自分と同じ口に揃えると言って切り裂き、溢れ落ちる血を盃に溜めて飲んだ。
座敷牢に戻された俺は逃げることだけ…生きることだけを考えていた。
盗んだ簪で木の格子を削り続けた。
気づかれるのではないかと怯え、毎日毎日神経をすり減らした。
迷い込んできた蛇の鏑丸だけが信用出来る生き物だった。
そんな苦しい日々の中。
俺は逃げることが出来た。