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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第117章 有馬にて


「竹は誰でも編めます。難しいのは、目が綺麗に整っているか、目が真っすぐ上がっているか。そういった単純なことが一番難しい。
有馬籠は一人で全ての仕上げをするので、職人の技量がよう分かるんです」

自身も職人なのだろう、男は籠を手に取って誇らしげに説明を続ける。

「有馬籠の最大の特徴は実用性です。色々な形がありますけど、技巧に凝り固まったようなものは作りまへん。例えば花籠なら、花が最も映えるように、さらにはどんな花でも美しく見えるように作る。ざるなら、素早く水が切れるように編む。有馬の籠は使ってもらってこそ、なんです。長く使っていくうちに色合いも美しく変わっていきますしね」

「素敵なお話ですね」

職人の心意気に胸を打たれる。こういった職人達の気概が良い物を後の世にも引き継いでいくのだろう。

「花籠と言ったが、これに花を生けるのか?」

朱里とともに黙って話を聞いていた信長だが、一つの籠を手に取りながら、職人の男に問いかける。

「へえ、最近では京や堺の茶人の方からのご用も賜っとりまして…なんでも茶会の花入れに使われるそうで」

「ほぅ、確かに、これに野の花などを生けるのも趣があって良い」

信長は籠を手の中で軽く回し、その編み目に指先を滑らせた。信長は茶道具にも造詣が深く、自身で茶会を催す機会も多い。

「茶の湯では、豪奢な花よりも野に咲く一輪の花が尊ばれることがある。人の手で飾り立てるのではなく、自然のままをどう引き立てるかが重視されるのだ」

職人は信長の言葉に感心したように頷く。

「有馬の籠は花の美しさを引き立てる、というわけですな。お武家様も茶を嗜まれるので?」

「茶はただの嗜みではない。人の心を映すものだ。器一つで、その場の空気が変わる」

朱里はその言葉に、はっと息を呑む。信長の言葉はどこか厳しくもあるが、その奥には確かな美意識が感じられた。

「確かに、茶の湯では“侘び"や“寂び”が大切だと聞きます。華やかさよりも、静けさや素朴さに価値を見出す、と」

「ああ、たとえば花も同じだ」

信長は籠を朱里へ差し出した。

「満開の花をこれでもかと詰め込むより、たった一輪でも、その命が最も美しく見えるように活ける。花は野にあるように生ける…それが茶の湯の花だ」


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