第117章 有馬にて
「…あっ、でも、今は身体を休めることに専念して下さいね?」
「ならば、やはり当分の間、ここに留まるとするか」
「……秀吉さんが困りませんか?」
「構わん。彼奴には戻った後、好きなだけ俺の世話を焼かせてやろう」
思いも寄らない信長の言いように、朱里は盛大に吹き出した。
「それ、本気で仰ってます?」
「半分ぐらいはな」
そう言うと、信長もまた笑いながら朱里の手を取る。今度は先程よりも優しく、大事そうに包み込んだ。
繋がれた手はそのままに、二人の間に流れる時間は、ゆっくりと確かに積み重なっていく。
湯の香りと、柔らかな陽射しに包まれて信長と過ごす静かな時間は、まるで夢のように穏やかで…この夢のような時間がずっと続くけばいいのにと、願わずにはいられなかった。