第70章 親友(青峰大輝)
「…あ、おみね」
僅かながらに震えた、俺の名前を呼ぶ声。
「…なぁ龍ヶ崎」
「…何?」
「…もういい加減素直にならねぇか俺ら」
「…え、」
「…友情の延長戦ってやつか?試してみねぇか、俺と」
あぁ、素直じゃねぇ。
なんでこんな言い方しか出来ねぇのか俺は。
龍ヶ崎から拒絶されるのが怖いのか。
もう俺は、龍ヶ崎が欲しくてたまらない。
「…私可愛くないよ?」
「…お前は可愛い」
「…身長も高い」
「俺の方が高ぇよ。20cmも差あんだろ。」
「…髪も短いし」
「似合ってるからいいんじゃねぇか?」
たぶん、龍ヶ崎も動揺してる。
そりゃそうだ。
中学からの友人で、お互いに彼氏彼女がいたこともあって。
付き合っただとか、別れただとかそんな話もしてて。
そんな俺が一歩踏み出そうとしているのだから。
「…あの子は?」
「…は?」
「…中学のときに付き合ってた子。あの子が1番長かったじゃん。」
…そうか。
龍ヶ崎には話してなかったのか。
中学のときに付き合っていたやつがいた。
その当時、俺は誰にも負けないくらいに成長していて。
でも心はついて行かなくなって。
いつしか”俺に勝てるのは俺だけだ”、そう感じてバスケに手を抜いて。
あいつを傷つけてしまう前に、別れた方がいい、どうせ俺から離れていくくらいならば、そう思って別れを告げたやつ。
高校1年のとき、ふいに再会して。
その時にはもうすでに、俺の手の届かないところに行ってしまっていて。
でも幸せそうに火神の前で笑うあいつを見て、安心した。
ちゃんと区切りをつけられた、と思った。
「…もうなんとも思ってねぇよ。」
「…嘘」
「嘘じゃねぇ。高1のときにケジメつけてんだよ。」
そう言えば丸々と大きくなる瞳。
「…あの子じゃないよ?私、」
「あ?分かってる。龍ヶ崎は龍ヶ崎だろ。」
「…」
「…ちょっと考えさせて。」
そう言った龍ヶ崎は、俺の手を離そうとはしなかった。