第3章 買い物
異性の目の前で着替え出した焦凍。私は何も見なかった。三角座りで両膝に顔埋めてたから何も見てない。
「…よく見たら似合ってんな、それ」
「それ…って何」
「服のことだ。ネックレスとかのアクセサリー似合いそうだな」
「邪魔なだけ、あんなにシャラシャラしたもの」
「まあ、何もなくても綺麗だから充分だろ」
「…あんまり変なこと言わないで」
ぶっ飛ばすわよ、という台詞は飲み込んだ。突然静かになったかと思うと、突然髪に違和感を覚え、身震いしかける。焦凍が髪を触っている
「…綺麗だな、この紺色」
「…ありがと…」
と小声で告げる。今度は小さい鼻息が聞こえ、チラリと見る
「…変態」
「仕方ないだろ、匂いが誘ってた」
「…チッ」
敢えて聞こえるように舌打ちしたのだが無視してるのかお構いなく嗅ぎ続けている。ので顔を掴む
「人目あるから。なくても駄目だけど」
「わかった」
と大人しく引き下がったかと思うと、今度は手を繋がれる
「…はぁ…」
とため息をつく。そろそろ言うのも疲れてくる。私が折れるしかなさそうだ。これくらいなら自由にさせておくかと諦める
「…可愛いな」
「は?」
「悪ぃ、何もねぇ」
「…変なやつ」
言いたいならちゃんと言えよ、と思った自分に驚く。今までなら鬱陶しいなこいつ位にしか思わなかったのに。そもそも男子と二人で出かけるということすらなかったのに。
「そろそろつくぞ、降りねぇと。しっかり手掴んでろ」
「え、あ、うん」
とつい間抜けな声を出す。行き先は全部焦凍に任せてたのだが、大丈夫だろうか。駅はまだ4時くらいだというのに人だかりでごった返していた。だけど、私は温かくしっかりと男子だと感じさせられるゴツゴツとした大きな手に掴まれ、迷うことなく人混みを抜け切った。
改札を通過し、人混みがずっと少なくなったところで止まる
「…腕」
「あ、悪ぃ」
とパッと手を離される。若干、赤くなり跡がついていた
「悪ぃ、跡になっちまった。痛くねえか?」
「痛くないけど…」
そっと腕を再び、今度は軽く優しく掴まれると赤い跡をなぞられる。
「早くしないと時間…」
「ああそうだな、来てくれ」
ちゃんと優しく腕を掴まれながらも、焦凍が目指してる場所へ向かった