第13章 焦凍のお母さん
扉をノックしようと手をあげ、一旦降ろして深呼吸してから扉を叩く。中からどうぞと言う、焦凍の声じゃない、女の人の声が聞こえてきて。意を決して中に入る。そこにいたのは、綺麗な人だった
「貴方が焦凍の彼女さんね。初めまして」
「初めまして、古率奏と言います」
「聞いてた通り可愛らしい方ね」
「いえいえ、そんな」
「…りんご切ってくる」
私が持っていたお見舞い品のバケットを取ってその中からりんごを選んでいた
「焦凍って包丁使えるの?」
「…りんごくらいなら大丈夫だろ」
「私やるよ?」
「まぁ、たまにはやらせて見てもいいんじゃないかしら?」
「そうですね」
携帯を見ながら何かやっている焦凍。りんご剥くのに携帯いる?何作る気なのあの人?
「ねぇ、貴方、焦凍は好き?」
その言葉にドキッとする。焦凍も多少動揺したようで向こうでイテッと言っていた
「もう、だからやるって言ったのに。手貸して」
血が出てるところに絆創膏を貼る。その間、焦凍は必死に何かを隠そうとしていた
「あらあら、ごめんなさい。聞きたくなったのよ」
クスクスと微笑みながら楽しそうにいう焦凍のお母さん
「…えぇ、もちろん」
チュ、と焦凍の頬にキスをする
「焦凍のお母さんの前で、これくらいの事できるくらいには」
「あらあら、いい人じゃない。良かったわね、焦凍」
「あぁ、まあな…イテッ」
「…私やろうか?」
手を掴んでまた絆創膏を貼るが、焦凍は首を横に振る
「大丈夫だ。慣れてきた」
「指は包丁が当たらないところに置いてね」
「わかってる」
本当かなぁ…と思いながら焦凍のお母さんが寝ているベッドの近くに置いてある椅子に再び座る
「体育祭、2位と3位でしょ?すごいじゃない」
「焦凍と戦ったんですけど…許容量オーバーしてしまって…」
苦笑しながら言うと、それでも凄いと褒めてくれるお母さん。その後焦凍がドヤ顔で持ってお皿。置いたあと戻り、また2つ違うお皿を置かれる
「全部やるつもりだったんだが…やっぱ難しいな」
目の前に置かれたのは、うさぎに切られたりんごだった。それであんなに苦戦してたのか
「可愛い、写真撮っていいですか?」
「えぇ、どうぞ」
「ありがとうございます!」
鞄から携帯を取り出すと、写真を撮った。そしてメールアプリのクラスグループに投稿し、焦凍が焦った
