第11章 体育祭
「どうしたんだい。まだ始まってすらないのに同じクラスから二人も」
「すみません…昨日、腰打ってしまって…診てもらえませんか?」
「…ついでに銃の古傷も治してやるよ。座んな」
頷いて、座る。半回転し、打たれた背中を見せる
「チューッ!」
と音が響いて、終わった
「次は腰さね。寝な」
「…はい」
と2つ置いてあるベッドの内、近い手前側に寝る
「あんた、何があったか知らないけどね。そんなにこだわる必要はないと思うさね。もし、そんなにこだわりたいなら、とことんこだわりな。中途半端に諦めちゃ、駄目だよ」
何があったのか知らない、などといいながら全て見透かしているような言葉に、私は胸打たれた。そうだ、私は…焦凍…
「…はい」
チューッと再び音が響き、腰の痛みが引く
「あんたの病名を伝えるとしたら恋の病さね。ぶつかるならぶつかりな」
「はい!ありがとうございました!」
そう言って勢い良く出て行く。しかし、本人を目の前にするとやはり緊張する。相手の周りの空気は張り詰めていて、用事がないのに話しかけるわけには行かなそうだ
チラ、と鞄の中を見る。3つのお弁当
…3つ?私が作ったのは、2つだけじゃ…
見覚えのない一つを取り出すと手紙が入っていて表に
『勝己へ』
裏には
『三月より』
と書かれていた。忘れないうちに渡しといてあげようか
「…爆豪、これ」
「あ?んだこれ」
「差出人は、中見たらわかるから」
と言い残し女子グループに入る。が、皆変な顔をしていた
「…奏ちゃん、流石にそれはあかんと思うわ…」
「?」
「古率さん、轟さんが見ていないからと言っても…」
「不味いんじゃない…?」
「?お弁当のこと?あれ、私の友達が渡しといてって言われて渡しただけだよ?」
「なんだ、そうなんだ」
「なら良かった。」
「浮気だと思っちゃったよー!」
「するわけないでしょ!!」
なぜか、その一言だけでキレてしまった。周りにシーンとした雰囲気が漂う。でも、許したくなかった。いくら葉隠が悪くなくても。私は焦凍を好きで、愛しているのだ。少し渡し物をしただけで、浮気なんて言葉使わないでほしい
「…ごめん。忘れて」
「ううん、私こそ御免ね」
「そうよね、奏ちゃんが浮気なんてするはずないわ」
私のせいでまた、気不味い雰囲気が漂う