
第8章 私を捨てないで

「…どこ、ここ…」
知らない、真っ暗な場所。自身の指先さえ確認できない程の暗さ。個性で懐中電灯を作り、辺りを照らす。何もないのを確認しながら、慎重に歩を進める。
「焦凍…!」
「…なんだ、お前か」
それはとても冷たくて。前、電話の時は若干だけれど、悲しさが含まれていたのに。今は完全な嫌悪。私に対して完全に嫌いと思っている声
「お前はいらねぇ。どっか行ってろ」
「嫌…嫌だよ、焦凍」
「なら…離れさせてやるよ」
焦凍が、私に向かって…凍らせに来た
「焦凍…っ!」
私を、捨てないで…!
そこで目が覚めた。
「あれ、私…」
見慣れない、けどわかる場所。焦凍の部屋で、きっと焦凍の布団の中。制服のシャツ1枚で、汗が気持ち悪いくらいにかいている。汗でシャツがくっついていた。そこで、部屋の扉が開く
「…あ…」
入って来たのは、焦凍だった。桶を持って中に白いタオルを入れていた。焦凍は数秒固まったと思うと、桶を投げ捨てるように置いて、こっちに駆け寄って来たと思うと、抱きついたきた
「焦、凍…?」
「奏……?」
なぜか確認するような目で、聞いてきて。素直に頷くと、もっと強く抱きしめられた
「悪ぃ、お前の話もちゃんと聞いとくべきだった。頭に血登ってて、冷静になれなかった…」
「…焦凍…」
「今からでも、教えてくれねえか?」
「…私の、知ってる範囲でね」
「おう」
数泊置いて、口を開く
「…私ね、親、殺したんだ」
「…?」
「いきなりこんなこと言われてもわからないか。昔、敵に襲われて…親を見殺しにした。けどね、敵に殺された…って言われたあとの記憶がないの」
「それって…キレたのか?」
「…怒ってた、けど…おかしいところがあるの。私の個性、覚えてるよね」
「具現化…だろ?」
「うん…けど私は、近くにいた人が言うに、突然歌い出して…敵の四肢を、もいだらしいの」
「何気にえげつねえな。それ」
コクン、と頷いて重い口を開く
「それで…日曜日、焦凍と話してた辺りで頭痛がして…そこからの記憶がないの」
「…三月、つったか。そいつが乗っ取ってた」
「…三月?」
頷く焦凍にして、私は考え出した。三月。その名前には聞き覚えがある
「…小さい頃、よく私に心の中で話しかけてくる子がいたの。その子が名前がないって言うからつけた名前が…三月だった」
「なら、そいつが助けたってことか…?」
「…かも」
