第6章 私が
奏side
…あれ、私いつの間に家に…
咄嗟に携帯を確認する。今日の日付は…水曜!?嘘でしょ、私の最後の記憶は日曜日なのに。メールアプリから50ほどの通知。焦凍からだ
焦凍_どういうつもりだ
こういったメールが何件も
『なんのこと?』
本当に見に覚えがない。焦凍から、電話がかかってきてそれに応答する
『…奏、お前…爆豪と付き合ったのか…?俺にあんなこと言って…』
「…焦凍。私…」
『その名前で呼ぶな。俺はどういうつもりか聞いてるんだ。好きとかわからないと言いながら爆豪と付き合ったんだろ。俺が嫌いならそういえ』
電話越しの彼は、確実に怒っていて。事情を言える隙間もなくて。昨日、正確には土曜日の優しさが嘘みたいで。声を殺して泣いてしまっていて。
『…なんでお前が泣くんだよ。もう連絡してくるな。爆豪と好きなだけいればいいだろ』
冷たくそう言い放たれ電話を切られた。事情がわからない。本当に。誰か、今の状況を教えてほしかった。焦凍に縋り付いて泣き叫びたい。飛ぶ記憶。焦凍の激怒の理由。日付の異様な飛び方。原因が何もわからない。ブロックされたと表示されたトーク画面に涙を零して泣いた。今日も学校だから体動かさないとなのに、動かない。まるで自分の物じゃなくて、他の人に盗られたみたいに。私が私じゃないみたいで。こんなに悲しいのはきっと、焦凍が好きだったからで。前の幸せが帰ってこないことを、携帯に突きつけられて。どうしたらいいのか全くわからなくて、たまたま着ていた服のフードを深く被った。
「おい、早く起きてこ…どうした?」
「…入らないで。近寄らないで」
もう何も信用できない。イレイザーも焦凍も勝己も、私自身も。
「…おい」
「触らないで!」
つい、大声が出る。イレイザーの前で出したことのない声
「…何があったんだ?」
「…言いたくない。」
ギュッと自身の拳を握り締める。もう何にも触れたくない。このまま廃れて死んでしまいたい。彼に必要とされない世界なんて…
ヒーローなんて、信じられない