第4章 瞬間記憶力【過去編】
「……蘭……お前、何か知ってるんじゃねーの?」
「…………知ってても教えない…ッ!!」
「あ、おいッ!!!」
俺と一緒に話を聞いていた蘭が今にも泣きそうな顔で首を左右に振ってから部屋を足早に出て行ってしまい、一体アイツに何があるのかどうしても知りたくて蘭の後をすぐさま追いかける。
「蘭ッ、ちょっと待てって!!」
「来ないでよッ!!教えないって言ってるでしょ!」
「っ…俺は…ただ悠の事が心配なんだよッ!…だから…何か知ってんなら教えてほしいんだ…っ…」
足早だったのが次第に走り始めた蘭をなんとか引き止めようと声を発し続けるとようやく動きを止めたことに安堵したのも一瞬で、振り向いた蘭の目から零れ落ちる涙に俺は何て言っていいのか分からず言葉を失ってしまった。
「っ、皆同じ!悠の事知ったら怖い、普通じゃない、気持ち悪いって言うのッ!!…やっと…やっと笑ってくれるようになったのに…ッ…新一くんも一緒なんでしょ!?」
大きな声で叫ぶ蘭から悲しみと絶望、怒りの感情が入り混じって伝わってくるのを感じながらこの状況に一体何事だと駆けつけてきた先生に大丈夫と告げてから蘭の手を取ってなかば強引に場所を移す。
「…ごめん…悠の事何も知らないで詮索しようとした。けど、アイツは俺にとっても今では大事なやつなんだ。だから…悠が悲しんで、苦しんでるなら助けたい」
「ふ、っ…うう……ほん、と…?悠の…こと、助けて…くれる、の?」
「悠のことなんだ、嘘なんかつかねえ。…だから教えてほしい」
ザーザーと降り続く雨音を耳にしつつも蘭から告げられるその内容に俺は驚き以上に今すぐ悠を探さなければという思いにその場を離れた。