第23章 17歳
「前も言ったけど、おしゃれしなよ?」
「うん…」
「その歯切れの悪さは何!?」
ペトラの声が、ますます尖る。
「だって… そんな変におしゃれして、気合い入れてるって思われるのも恥ずかしいし…。いつもどおりの格好で行くよ」
「まぁ、その気持ちもわからなくもないけど…」
あごに左手のこぶしを当てながら少し考えていたペトラは、ふと何かを思いついた様子で目を輝かせた。
「そうだ! 服はいつものでいいよ。マヤの着てる服、可愛いし…。髪よ、髪!」
薄茶色のつぶらなペトラの瞳は、まっすぐにマヤの濃い茶色の長い髪を見ている。
「マヤ、いつも後ろで一つにまとめるか、おろしてるかのどっちかじゃない? 私が綺麗に編みこんであげる!」
「えっ、そんなのできるの?」
「うん、得意よ。よくオリーにやってあげてたから」
「オリー?」
突然ペトラの口から飛び出した聞いたことのない名前に、マヤは首をかしげた。
「オリーはオルオの妹だよ。オルオのやつああ見えて、下に弟や妹がわんさかいるんだよね」
「そうなんだ!」
初めて聞くオルオの兄弟事情に、マヤは顔を輝かした。
「わんさかって? 何人なの?」
「えっとね、一、二、三…」
ペトラは倉庫の天井を見上げ、数え始めた。
「五人だ。だから、オルオ入れて六人ね。あいつ、六人兄弟の長男なんだよ」
「そうなんだね! ……私、一人っ子だから、そういうの憧れるなぁ。楽しそう!」
「マヤも一人っ子なんだ。私もなの。そういえば兄弟が何人いるとか、そういう話になったことないね」
「そうだね」
「私も一人っ子なんだけど、オルオんとこの兄弟といつも遊んでたからさ、一人っ子な気がしない。さっき言ったオリーなんか自分の妹みたいだもん」