第23章 17歳
「……ノリって」
ペトラの明朗な積極性に、マヤは大いに感心する。
「で、実際いた訳だから来てみて大正解!」
片目をつぶりながらペトラは笑った。
「あはは、そうだね」
「でもマヤにとってはおじゃま虫だったね、ごめん!」
「だから、そんなんじゃないってば!」
「へぇ~、そうかな? 怪しいよね」
「どこが」
「だってさ、兵長言ってたよね? ……“あとでな” って」
「あぁ…」
マヤはペトラが何故しつこく食い下がるのか、ようやく納得がいく。
「あれは、あとで執務のお手伝いに行くからだよ?」
「……わかってるけどさぁ、なんか言い方が優しいっていうか」
「そう…?」
「うん、本当になんにもないの?」
「………」
なんにもないのかと訊かれると、そうでもない訳で。
黙ってしまったマヤにペトラは少し声を尖らせた。
「ほら! やっぱなんか、あるんじゃない!」
「あのね、ペトラ…」
メラニーが兵長に告白していたことは言えないが、自身が兵長と街に行く約束をしたことは言ってもかまわない… というか、そのうちペトラには報告するつもりでいたのだから。
「兵長とここで逢う約束をしていたとか、そういうのでは本当にないのよ。でも、その… 脚立から落ちそうになったところを助けてもらったあとに、兵長に街に一緒に出かけようって誘われたの」
「うわぁぁぁ! やっぱり!」
倉庫の外にまで響くような大きな声を上げるペトラ。
「早速こないだ約束してたデートに行くってことだね!」
「デートじゃないよ、執務を手伝ったお礼って言ってた。だから執務のつづきみたいなものよ」
「え~、理由はなんでもいいよ。兵長とマヤが二人で街へ行く。それはもう立派なデートなんだからさ」
「……そうかな…」
自信なさげな様子のマヤをペトラは叱るように。
「そうだから! あの兵長とデートするんだから、もっと胸を張って!」