第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
「「……そうですか」」
ハンジがわからないと言っているのに、ペトラとマヤにわかるはずもない。
「だから、この謎現象を解明するためにも協力してくれないか!?」
「「協力?」」
「あぁ、ちょっと新薬の効果を確かめたいんだ。くいっと飲んでくれたらいいだけ、簡単だから!」
鼻息を荒くしているハンジの隣でモブリットはやれやれと目をつぶって首を振り、ナナバとニファも苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。
「新薬って…。ハンジさん、私たちを実験台に?」
「なんの薬なんですか?」
ペトラとマヤは不安そうな顔をしている。
「やってくれるかい!? いや~、試してほしい薬はいくらでもあるから好きに選んでくれていいよ。でもまぁ私としては告白薬を優先的に試してほしいな。これだけはモブリットに断固拒否されて、まだ治験できていないんだ」
……モブリットさん、逃げつづけてるんだ…。
モブリットのハンジへの想いを知っているマヤは、モブリットが告白薬をいまだ飲まずに済んでいることに安堵した。
「告白薬?」
初めて聞く薬の名に、ペトラがすっとんきょうな声を出す。
「ペトラ、興味あるかい? じゃあ飲んでみようか。告白薬さえ飲めばペトラ自身さえ気づいていないような本当の想いが飛び出す可能性がある」
「……本当の想い…」
思わず少し離れた位置にいるオルオを見てしまい、慌てて首を大きく振った。
「そ、そんなの別にないし…! ハンジさん、他のでお願いできますか!」
「う~ん、告白薬は人気がないなぁ。でも贅沢は言っていられない。ペトラ、マヤ! とりあえず今から研究室に行こうか」
「「今からですか?」」
どんどん話が進んで、今すぐ実験台にさせられそうになっている二人を救ったのはミケ。
「ハンジ、いい加減にしろ。マヤにお前の怪しげな薬の毒見はさせられない」
「なんだい、黙っていたくせに急に。ミケのミケチ! いいよ、マヤはあきらめた。ペトラだけでも充分さ」
「ペトラに関しては俺には権限はないが…、よく考えるんだな。ペトラが誰の部下かを」