第23章 17歳
同じ一人っ子でも、オルオ兄弟と一緒に育ったおかげで自分が一人っ子である気がしないと言うペトラを、マヤは少しうらやましく思った。
「へぇ…、自分の妹みたい… かぁ…」
髪を結ってあげたり、服を貸し借りしたり。笑い合って、一緒に歌を歌ったりなんかして、時には喧嘩もするだろう。
……いいなぁ、すごく楽しそう!
オルオの妹オリーとペトラが本当の姉妹のように過ごす光景を頭の中で想像していたマヤは、急にぷっとふきだして笑った。
「どうしたの、マヤ」
「あっ うん、あのね。ペトラとオリーが遊んでいるところを思い描いていたんだけど、オリーの顔を知らないじゃない? だからオルオが女の子になった顔で想像しちゃったの」
「やだ、何それ! 気持ち悪い」
鼻に盛大に皺を寄せて嫌がるペトラ。
「ごめんごめん」
顔の前で両手を合わせるマヤ。
「あぁ でもオリーはね、あんなオルオみたいにシワシワじゃなくって、ちゃんと可愛いからね」
「あはっ、そうなんだ。……って! オルオはそんなにシワシワじゃないし、結構可愛い顔だと思うよ?」
「……は? 何言ってんのよ、マヤ。兵長とラブラブデートの約束なんかしちゃって頭おかしくなったんじゃないの?」
「ちょっと!」
ペトラの放った “ラブラブデート” なる言葉にマヤは耳まで真っ赤になった。
「赤くなっちゃって~。ほんとマヤってからかい甲斐があるぅ!」
そう言って笑うペトラの顔も楽しそうに紅潮している。
「とにかくデートの日、髪を編みこませてよ?」
「うん、わかった。お願いするね」
「任せといて!」
こぶしで自身の胸をどんと叩いたペトラだったが、急に真面目な顔をする。
「あっ、でもいつ? 私も調整日じゃなかったら、きついかも」
「来週の日曜日」
「良かった! 私も休みだ。休みじゃなかったら、朝にやってあげる時間なんかないもん。いくらマヤのためでも早起きはできないし」
朝の弱いペトラらしい言葉に、マヤは微笑む。
「とびっきり可愛く編んであげるからね!」
「……ありがとう、ペトラ」
「楽しみだね~」
「うん」
ペトラとマヤは仲良く笑い合いながら、倉庫をあとにした。