第23章 17歳
「兵長!」
ペトラは一番奥の棚の角を曲がってくると嬉しそうに声を上げたが、すぐに目を真ん丸にして素直な感想を口にする。
「あれ? マヤもいたんだ!」
リヴァイはそのことにはふれない。
「どうした?」
「あっ、はい。エルヴィン団長がお呼びだそうです」
「わかった」
短く返答すると、マヤを振り返る。
「では… あとでな」
「はい」
そのまますっと音もなく出ていったリヴァイの後ろ姿を見送っていたペトラは、扉が閉まる音を確認すると両手を顔の前で合わせて謝り始めた。
「マヤ、ごめん!」
「えっ、何が?」
「兵長と逢引してるとこ、邪魔して!」
「あ、逢引?」
想定外の言葉に驚くマヤ。
「そうよ! ついこないだ兵長と一緒に晩ごはんを食べてるんだって聞かされたと思ったら、もうこんな誰もいない場所で…」
そう言いながら薄暗い倉庫をきょろきょろと見渡す。
「やるじゃん、マヤ!」
「違うから!」
「ん? 違うの?」
「うん、違うの。私がここにいたら兵長があとから来て、それで…」
……あっ。
兵長が告白されていたことは言わない方がいい。プライベートなことだし、それにメラニーのプライバシーだって守らないと…。
「脚立から落ちそうになったところを助けてもらったの」
「え! 大丈夫なの?」
「うん」
「なんで脚立なんかに…?」
「あっ、それは…」
マヤは最上段の棚を見上げる。
はみ出て落ちそうになっていた立体機動装置は、先ほどと同じ位置に変わらずあった。
「あれを直そうと思って…」
脚立に足をかける。リヴァイに助けられて腕の中にいる間に、すっかり右足のしびれは治まったようだ。軽快にのぼって、さっと立体機動装置の位置を正常に戻した。