第23章 17歳
ふつふつと俺がミケへの殺意を滾らせていると…。腕の中の愛おしい匂いが、もぞもぞと動く。
……おい、逃げるな。
明らかに俺の腕の中から逃れようとする動きに若干苛立つ。
「あの…、兵長?」
愛らしい声が耳をくすぐるが、その内容はとんでもないものだった。
「もう大丈夫ですので… 放してください…」
……あ?
せっかく閉じこめたのに。やっとふれられたのに。何を考えているんだ、こいつは。
俺は黙って抱く腕に力をこめる。
それでもあがくマヤ。
なぜだ?
ミケに抱かれて嗅がれていたときは、大人しく身をゆだねていたじゃねぇか。
俺の腕の中は… そんなに居心地が悪いか?
ずきんと胸が痛む。
マヤの嫌がることはしたくない。したくはないが、放しがたい。
放したくないんだ、どうしても。
……頼む、もう少しだけこのまま俺の腕の中にいてくれ…。
心の悲痛な叫びが声になって飛び出してしまう。
「……もう少しだけ…」
切なる想いは心の中だけにとどまっていられない。言葉になって、声となって魂の力を持つ。言葉に宿る魂の叫び… 言霊は、強い想いを結びつける。
……頼む。もう少しだけ、このままでいてくれ。
リヴァイの言葉に縛られて腕の中で大人しくなったマヤは、しばらく身をゆだねていたが、ふれられているところが、自身の体温が熱くて、熱くて。
このままでは、のぼせてしまう。
……熱を逃がさなくっちゃ。
どうしたらいいの?
熱くて苦しい。胸だって、こんなにもドキドキして。
何か… 話さなきゃ。そうしたら少しでも今の状態から逃れられる?
「……いつも、あんな風に告白されてるんですか?」
「………」
沈黙の答えにマヤは、しまったと思う。
……馬鹿! どうして、よりによってそんなことを訊くの。
でも仕方がないじゃない。
何を話せばいいのかなんて、わからない。ただ腕に抱かれて恥ずかしくて、熱くて胸が苦しい状況から逃げ出したいだけなんだから。
そう開き直ったマヤの耳に、静かに肯定の声が聞こえてきた。
「そうだな…」